裏庭

宝塚。舞台いろいろ。

『アル・カポネ─スカーフェイスに秘められた真実―』感想文。※ネタばれ有。

アル・カポネ─スカー・フェイスに秘められた真実―』
雪組 シアター・ドラマシティ公演の感想文です。とりあえずざらっとメモ書き。
ネタばれ有りです。まだ観劇していない方、ネタばれが嫌な方は読まないで下さい。
観たことや観たような気がすることや観ていないことをたくさん書いています。捏造、妄想、創作てんこもりです。
ヲタク発言有りです。もんぺ発言も有りです。独断と偏見、私的見解に満ち満ちています。
うろ覚えなところも多々有ります。思いついたことを思いついたままに書いているのでちょっといろいろおかしいです。
もう大好きすぎて苦しくてたまらずにうっかり吐きだしてしまった感想文です。長いです。やたらと長いです。
御仏のようなお心でおつき合い頂ければ幸いです。




カタリ・カタリ─
幕開きから胸かきむしられたのは、カタリ・カタリ。自分を捨てた愛する女性のつれない心を嘆き、哀しみにくれる男の歌─、このナポリ歌曲にはそんな歌詞があります。アルは陽気に掃除をしながら鼻歌まじりで歌って、何の歌?と訊いた初対面のメアリーに屈託なく教える、ああ、このへんがとてもイタリア男だなあ、と思いました。イタリア男はこんな悲恋の歌でさえ、酔いしれるように、むしろ口説き文句のように歌うのだろう、なじり、責める言葉さえもが彼等にとっては愛の告白。イタリア男のことなど知らない私の偏見と想像にすぎませんが。

余談。麻実れいさんのサヨナラ公演『はばたけ黄金の翼よ』で歌った毬谷友子さんのこの歌が、とても素敵でした。大好きな曲です。

この歌曲は哀しみに満ち満ちている。はじめから、この物語がたどりつく運命を歌っている、幕開きから、残酷であり、そしてどうしようもなく美しい。

ここでひと泣きして(うっとうしい)舞台のそのむこうに、シルエットをみて、またひと泣(うっとうしい)

永久輝ベン・ヘクトに何故、真実を語ろうと思ったのか。そこにアル・カポネと云う男の虚栄心と、小ささと、人から愛されたいと云う俗っぽさがチラチラと見えて、アルの、極めて平凡な、ただの男である部分がみえた。とてつもなく大きな夢をみてしまった、男。マフィアのボスとなり、歴史上もっとも有名な男の一人となってしまった、男。でも、アル・カポネは特別な男なんかじゃなかった。いつもとなりで眠り、そうして目覚める、その男と、何ら変わりはない男だったのだ。これはそう云う、男─アル・カポネの一生を描いた舞台。
と、云うのが私の私的見解。

アル・カポネをあつかった映画や小説は彼をとてもエキセントリックに描いているものが多く、私は特に映画『アンタッチャブル』が強く印象にあります。この映画が大好きで、『ゴッド・ファーザー』も大好きで、つまり、マフィアものが好きなのですが(ヲタク)、それらは溺れそうなほどの酒と真紅の唇をした女と血の結束と許されざる裏切りがワルツを踊る華やかな世界、だけれどその果てに待つものはいつだってみじめでむごたらしい死である、そうやって指に棘を刺すように悪に鉄槌を打込み、だけれどその世界をいつか忘れてしまった故郷を想うように美しいと感じてしまう、そう、うさんくさいまでにドラマチックな映画、それがマフィア映画です。ざっくり言うと時代劇です。そうして、それら時代劇は時として史実とは大いに異なる物語となっています。『アンタッチャブル』も登場人物は実在の人物ですが、史実とは違うところだらけでした。そして、『アル・カポネ─スカー・フェイスに秘められた真実』もそういった“時代劇”のひとつだと思うのです。でも、『アル・カポネ─スカー・フェイスに秘められた真実』は従来のマフィアものとまったく違った、この、ifは知らない、いままで観たことのないアル・カポネ像は、衝撃でした。織田信長が実は女だった、聖徳太子ユダヤ人だった等のif世界の物語とならぶほどの、何と云う、ドリィ夢か!
アル・カポネの望海化・・・(擬人化みたいな)刀が美青年になったり戦艦が美少女になったりするこの世界、アル・カポネが望海さんになる世界だってあたりまえのように存在する。その原田くんの乙女スピリットに脱帽、そしてくるおしいまでに理解出来てしまうのです。
原田先生が世間的にはわりと酷評されていることが私にはほんとうに理解出来なくて、でも、その理由が、なんだかちょっと解ったような気がします。かつて、荻田浩一先生の『螺旋のオルフェ』が上演された時と、とても似ている状況なんだな。

登場人物の矢印がすべてアル・カポネにむかっていて、アルはそのむかってくる矢をすべてその身で受けとめて受けとめて、それが彼の人生だった。彼は誰も何も拒まない、すべてをのみこんで、そうしていっぱいにいっぱいになって、あふれて破裂した、それが彼の人生。

(望海さん総受だったとかそう云う意味じゃない。)

大衆の気に入るような脚色大いに結構、と、永久輝ベンの脚本を肯定しながら、でも君には俺の真実を知ってもらいたいんだ、・・・て、イタリア男はこれだからこれだから。もうこのときすでに永久輝ベンの望海アルへの興味はグン、とあがっているのが目にみえてわかる。伝説のギャングがその真実を自分だけに教えてくれる、心がざわめかないはずがない。人心掌握の術を心得ている、さすがファミリーのドンと云うか、お母さんは家族の事は何でもお見通しと云うか、いや、天然と云う可能性も・・・、アル・カポネベン・ヘクトに真実を告げたのは、必ずベンは自分に興味を持つに違いないと云う計算も少なからずあったのだと思う。興味を持って、この真実に君がどう思い、どうするかは君の好きにすればいい、ケ・セラ・セラ、なるようになるさ─、結果、その結末はアルにとってとてもよろこばしいものとなった。ラストシーン、小さな賭けをして、勝った子供のように、微笑う望海アル。これは、アル・カポネ、ギャング人生最後の賭けだったのかもしれない。

それにしても自分を題材にした映画の脚本に興味をもって熟読してダメ出しするとか可愛いすぎるそりゃ永久輝ベンも心奪われるわ。

どう考えてもお店のナンバー・ワンは望海アルだよね。望海アルひとりで踊り子10人分くらい稼ぎそうなんだけど。
エプロン姿に私のうちなる獣が吠えた。
店で働かせてほしいと大湖メアリーを連れてきた夏美トーリオに、アイリッシュの女は雇えないと断る久城フランキー。
「いいじゃないか、美人だろう、いい稼ぎになるぞ、」
「アルがその10倍稼ぐから女は必要ないんだよ、」
久城フランキーなら言いかねないね・・・

店でかいがいしく働くの望海アルはお客にもモテモテだけれどお店の女の子たちにも大人気で、次々と望海アルに日替わりネタをぶつけてくる雪娘たち。またここでも望海さんいろいろ鍛えられている!でもこれだけ毎公演鍛えられているにもかかわらずネタにたいする返しがぎこちないと云うか初々しいと云うか、いつまでたっても慣れないところが望海さん。

夏美トーリオに連れられて店にやってきた大湖メアリーをみたときは特に特別な興味をもったふうではなく、アイリッシュ系は雇わないと断る久城フランキーと夏美トーリオとの押し問答を傍らで聴きながらも自分の仕事を軽快にこなしてゆく望海アル。特に助け船をだそうとしたりもせず、けれどちゃんと絶妙のタイミングでさり気なく久城フランキーが口をはさむまもなく大湖メアリーを助けちゃった望海アルが最高に粋で漢前だった。でもそのときはまだ、恋はうまれていなかった。こまっている女の子をあたりまえのように助けただけ。恋におちた瞬間は、はっきりそれとわかった。きっとあの時、ふたりは同時に恋におちたのだろう。でも、どうしてその瞬間、突然恋におちたのか。不意に近づいた顔、目と目があったそのとき、相手の瞳のなかには、自分がいた。まるで貴方の瞳のなかに、とらわれてしまったみたいで、ドキドキした。それが、恋。
と、あの場面を文章にするとこんなかんじになるのかな、と。
砂糖吐く!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

それにしても夏美さん、本当は職業マフィアなんじゃなかろうか。どこからどうみても、本物。間違ってるとこひとつもない。

父親の借金のかたにボスの愛人になれとせまるアイリッシュ系のギャングたちから大湖メアリーを護り、頬に傷をおった望海アル。一般的には、店の女に手をだしてその女の兄に切りつけられたとなっているのだけれど、この宝塚版の設定のほうが望海アルの頬に傷がついた理由として説得力がある。そうして、その傷が、これからの望海アルの人生のすべてを支配することになる。この傷がなければ、望海アルの人生はまったく違うものになっていただろう。

頬を手でおおいながら闘う望海アル。カウンターの下へ隠れて、次に顔をだしたときにはその手のひらの下から傷がのぞいていた。カウンターの下に傷がセットしてあってそれをぺたって貼りつけているのかと思うとかわいい。

大湖メアリーは傷ついた望海アルを自分の部屋へ連れてゆく。病院へ連れて行ったほうがいいのでは、と思ったけれど病院も彼等にとって安全な場所ではないのかもしれない。もしくは、おおごとになって店に迷惑をかけてしまうのを避けたのか。だからといって、自分の部屋に連れ込むとは・・・?手負いの望海さんを・・・せし子さん・・・・・・(もんぺ)

ベッドに倒れ込んだ途端、気絶してしまったのか、頬の傷もそのままに朝まで眠ってしまった望海アル。そのかたわらで一晩中望海アルを見護っていた大湖メアリー。傷に触れて起こしてしまうのをためらったのか、でもどう考えてもはやく手当てしたほうがいいと思うのだけれど。どうしていいのかわからず、大湖メアリーも混乱のまま夜を過ごしたのかもしれない。決して、その薔薇色の疵口を美しいと想いながらうっとりと眺めていたり眠っている姿に萌!萌!(絆!絆!みたいな)して床をごろごろ転げまわっていたら朝がきてしまったとか、決して、そう云うわけでは、なかった、はず、だ。たぶん。
望海アルの左頬についた傷は生々しく、傷をおさえていた布いっぱいに血が滲んでいた。
望海さんの肌についた傷
傷のついた望海さんの肌
なんだろう、何と云うかとても、痛々しく、でも、なんだか、とっても興奮するのは何故なの。
せし子さんもそんなことある?

傷に触れると、痛、望海アルが呻く。ご免なさい、と手をひっこめる大湖メアリー。こんな美人に触れられて嫌なわけがないと、望海アルは微笑む。大湖メアリーの手をとって、手に口吻る。嵐のようにおとずれた、恋。ふたりは見つめあって、─暗転。
どうでもいいけど早く手当てしろ。

惜しげもなく身を投げだして、その身が傷付くのも厭わず、そうしてその傷が永遠にきえることなくその身に刻まれることさえも構わない、そんな姿をみていると、何とも言えない気持ちになる。自分の命の価値を、薔薇の花弁ひとひらくらいにしか思っていない、だけれど、貴方の命も身体も心も、かけがえのないほどに美しく、星よりも大切だと云うことを、どうか解って。そうしてそれを望海アルに教えたのは、大湖メアリーだった。護るものを得た望海アルはその瞬間から変わった。まさに、スカー・フェイス、その傷によって、彼の運命はにぶい音をたてながら動きだした。アル・カポネは何処へ行くのか、その足元には、どこまでも深く、果てなく、薔薇色の闇がひろがっていた─

調子にのるとSSをはじめる癖があります。

アイリッシュ系ギャングの報復で店は連日のように嫌がらせを受けていた。望海アルに知られないうちに荒らされた店を片付けようとする久城フランキーたち。しかし、望海アルはこれ以上迷惑はかけられないと店を辞める事を決意する。
今日はトマトが安かった、そう言いながら袋いっぱいのトマトを抱える望海アル。(反芻・・・・・・)
望海アルに自分の片腕にならないかと誘う夏美トーリオに、自分はカタギの世界で成功したいと告げるが、その傷でカタギの世界で生きていけると思うのか、そう言われて、そ、と頬の疵に触れた、望海アルの昏い瞳。イタリア移民と蔑まれながらもいつか成功してみせると輝く瞳で微笑っていた、その時との違いがはっきりとしていて、辛くなった。
望海アルはアンダーワールドで生きる決意をする。頬の傷に、自らの運命を悟って。運命を受入れて、たくさんのものを諦めて、だけれど決して絶望はしない、希望の代わりに野望を抱いたアル。その瞳は生への渇望で燃えていた。アルのなかに最初の一矢が放たれた。

よろこぶ夏美トーリオとは裏腹に、複雑な、苦い顔をして、望海アルから目を反らす久城フランキー。一度、光射さぬ道を歩いたら、もう二度と光ある世界へは戻れない。久城フランキーはそれを知っている。どんなに成功しても、ギャングはギャング、どう言い名を変えても、法を犯して生きる者であることに変わりはない。夏美トーリオと望海アルの意気揚々とした様子と久城フランキーたちの冷たく重い様子が、ひとつの場面に存在し、望海アルの運命の明暗を表しているようだった。

シカゴで夏美トーリオの右腕として働く望海アルはシカゴの豪奢な闇の匂いをまといその世界に君臨していた。一瞬で、まるで様子が変わった望海アル。その様子に、描かれていない物語が観えた(幻覚)。シカゴへきてからさぞいろいろあったのだろう。あんなことやこんなこと、そんなことまで・・・いろいろ・・・そりゃもう、ねえ・・・・・・、まあそれは別の機会に薄い本にでもするとして(しない)

ブルックリンのクラブで女の子たちに可愛がられていた望海アルが、手慣れた様子で女たちの相手をする、でも、慕われ、たよりにされている、そう云う根本的なところは変わっていないように感じたのだけれども、シカゴの女達は強く、たくましく賢い。ここの女達のボスは舞咲デールだったようだ。夏美トーリオや望海アルよりもみんな舞咲デールの言葉を信じた。誰かひとりくらい望海アルの話を聴いてあげて、と思ったが彼女たちは男達の薄情さをイヤと云うほどみてきたのだろう。ギャングと云うモノがどう云うモノなのか、彼女たちはうんざりするくらい知っていた。あっさりと望海アルとクラブを捨てた女達は潔く、何だかとてもかっこよかった。舞咲デールをセンターに、女達VS望海アル(女達に翻弄される望海アル)みたいなナンバーがほしかったところ。舞咲さんと望海さんの歌の競演がいつか叶うといいな。
舞咲デールが朝風ビッグ・ジムの女でいたのはビッグ・ジムの権力とお金が目当てだったのだろうけれど、ビッグ・ジムの、とてもわかりやすいところがきっと好きだったんだろうなあ、と思った。朝風ビッグ・ジムは舞咲デールに本気で惚れていたのにあさはかな謀略で舞咲デールを怒らせてしまって、ほんとうはあとで平謝りするつもりだったのだと思う。そして舞咲デールも新しい毛皮のコートとダイヤの指輪で許してあげるつもりだったのだろう。それが二人のいつもの痴話ゲンカ。だったはずなのに。
舞咲デールはきっと、これからも強くたくましく生きてゆくのだろうと思う。

朝風ビッグ・ジムのこの登場時からやれれる感満載の小悪党っぷり。ビジュアルこれでもかってくらい作り込みすぎていておもしろいことになっていたけれど、敵役のテンプレを完璧にもりこんでいるところ流石だと思う。ああ云うキャラデザある。とことん悪いヤツなのにどことなく愛嬌があって愛される、チートキャラ。あと朝風さん基本かっこいいんだよ(憤怒)。それにしても、夏美トーリオを失脚させて、望海アルを、自分のモノにしようと、していたですって・・・?朝風さん・・・??? 別の痴話ゲンカはじまってた。

禁酒法を逆手にとって自分たちの利にしてしまう。まさに、ピンチはチャンスやでえ!ビジネスの基本中の基本だと思う。ただ、法にふれていたと云うだけ。それが問題なのだけれど、そもそも、禁酒法は生類憐みの令に匹敵するくらいのまぬけな法だと思うので・・・ほんとすごい、アメリカさん。その発想はない。
そうしてピンチこそチャンスにいちはやく気づいた望海アルはまさにビジネスの才能に長けた青年実業家そのものだ。バブル時代の超エリートヤンエグと云うところだろう。リーマンものか!!!

夏美トーリオを生贄にしようとした朝風ビッグ・ジム。仲間を裏切る奴は絶対に許さない、ファミリィを愛し、ファミリィを信じ、ファミリィのために生きる、その正義すらも失ってしまったら自分たちはただの悪党にすぎない、虫けら以下の存在になってしまう・・・、望海アルはファミリィへの忠誠と愛で法を犯して生きることを必死で肯定しようとしていたのかもしれない。だから、それを裏切る者は絶対に許しはしない。すべてのファミリィのために。ファミリィの正義の為に。仲間の為、それが望海アルの唯一無二の正義となった。
正義はひとつではない、俺は俺の正義を信じる、朝風ビッグ・ジムを撃った瞬間、望海アルはそれを胸に闘って生きてゆく覚悟を決めた。

禁酒法が望海アルを、また変えた。どんどん変わってゆく望海アル。主に、視覚ですぐにわかる変化としては、指輪がゴツくなりました。と云うか、望海アル、それまで指輪してたかな?大湖メアリーは左薬指に指輪をしているけれど、望海アルの左薬指に指輪を確認出来ず・・・、次回よく見てみよう。禁酒法以降の望海アルは指輪しています。

子供ができたの。そう大湖メアリーから告げられた望海アルの嬉しそうな愛しそうな顔。もう、この先何をやっても産まれてくる子供のためにいっしょうけんめい働くマイホームパパにしかみえないしもう何をやっても許せる気しかしない。
そして父になった瞬間の望海さん・・・と云うものに少なからず衝撃を受けて、この、きもちを何と言えばいいのか、この、果てない荒野でひとりたたずんで風を受けながらもっふもふの羊の群れに体当たりされているような、この。
ベネディクトさんが父親になったときや、ブロンソンが父親になったときのことを考えたら何かツン、とした。彼等もきっといいお父さんになる。

望海アルに優しくされたその時から募らせた想いのたけを付き合ってください!・・・じゃなかった、子分にして下さい、と告白しにやってきた真那ジャック。しかし、子供に用はない、とすげなくされて、立派な大人の男になってやる!ととびだしていった真那ジャック。香綾バグズ、叶オバニオンに挑んでピンチになって望海アルに助けられてそのまままんまとおしかけ女房・・・じゃない子分になってそして豹変してすっかり彼氏ヅラしている真那ジャック。哀れな子供のフリしてまんまとやったわね・・・!まなはる、おそろしい子・・・。ほんと油断ならないわぁ、どいつもこいつも・・・。

我らの友!みんなで力を合わせてがんばろーぜ!と歌いあげたあと、お前らなんかと仲良くするわけねえだろうばーかばーか、てすっごい悪い顔してる香綾バグズと叶オバニオンの絵に描いたような二人組にすがすがしい思いがして微笑んだ。こうやってみると、ほんとうに何で望海アル・カポネさんはこの世界の頂点にまでのぼりつめ巨悪の王として君臨することが出来たのだろうか・・・どう考えても望海アルさんより悪の才能に長けた人たちいっぱいいたのに・・・

夏美トーリオが香綾バグズと叶オバニオンと取引をする場面、どう考えても、おじいちゃん!それ詐欺だよ!詐欺にひっかかってるよ!気を付けて!!!オレオレ詐欺の現場を目の当たりにしている気分だった。

夏美トーリオを侮り、騙したことへの復讐として、望海アルたちは香綾バグズ達に闘いを挑みます。

夏美トーリオを欺いた、仲間への裏切りは絶対に許さない、その“正義”のもとに彼は闘います。ギャング同士の抗争にしかみえないこの戦争を“真実の”アル・カポネの視点からみると、これは“正義”の戦いとなるのです。しかし抗争に巻込まれた一般市民にとっては、ネスの妻の言う通り「ギャング同士の争い」でしかないのです。が、月城ネスにとってはそうではなかった。月城ネスにとっても「ギャング同士の争い」でしかなかったかずのこの出来事が、ある一人の男との出逢いによって、その“真実”に触れてしまった。
一般市民には危害を加えるなと訴える望海アル。抗争のさなかに巻込まれた男女を助ける。それが月城エリオット・ネスとのちに彼の妻となる透水エドナ。
月城ネスにとって望海アルって白馬の王子様じゃん。
何この少女漫画設定。ここで望海アルと月城ネスに運命の出逢いをさせてしまうとか何この神設定。ふるえるわ!!!
そのときから月城ネスにとって望海アルは忘れられない人となった。・・・実は自分を助けてくれた名前も知らない王子様をずっと探していたんじゃないのかな・・・この世界に関係していればいつか必ず彼にもういちど会えると思って、だから酒類取締局の捜査官になったのでは・・・?月城・・・・・・おまえもか・・・・・・(もんぺ)

ネスがこの後、何度も結婚に失敗してしまう理由が何となく解ってしまったようななんというか何。

実際のエリオット・ネスの人物像はけっこうなマダオで、それが月城ネスにみょうにマッチしていて、私の月城くん感はいったい。美人のマダオとか危険極まりない!

引退を決意した夏美トーリオはボスの座を望海アルに譲り、望海アルはとうとう、王となった。望海ドン・カポネ王国がついに誕生した。

そしてかの有名な血の聖ヴァレンタインデーの虐殺。これ、けしかけたのは実はジャック・マクガーンなのですが、まなはるくん、すっかり・・・、望海アルに認められたくて頑張ったのかな・・・立派な男になったところをみせたかったのかな・・・、でも、そこまでだ。それ以上はNGだ。(もんぺ)

その後、身の安全をはかり、やりすごすために自ら計画的に出頭、刑務所に入る。しかしそこではまるで女王様のようにもてなされている望海アル・カポネ。ここで、冒頭の永久輝ベンとの邂逅場面につながります。

世界大恐慌勃発。

約十か月の刑期を終え、戻ってきた望海アルは恐慌で飢えに苦しむ人々に私財で食料を買い、彼等にあたえようとしたが、人々はアルをけがらわしいギャングと罵りそのさしだされた手を拒絶する。民衆はアルを憎んだ。彼こそが悪魔そのものであるかのように恐れ、忌み、蔑んだ。貧しく苦しい現実に憤る人々の怒りはマフィアと云う悪の源へと憎しみをむけさせた。パンを掴んだまま行き場を失った望海アルの手が、哀しくて、どうしようもなく哀しくて、胸が痛くなった。でもアルはそんな人々の気持ちを受入れる。それは寛容さからでも、慈愛の心でもなく、「仕方がないことだ」と云う諦めの気持ち。人から好かれようなんて元より思っていないさ、と云う、その微笑みが、もう、たまらなくて、つらくて、誰か望海アルちゃんを抱きしめてあげて!!!!!

政府が彼等に何もしないから俺がするしかない、と望海アルは言い、でもその金は他人からまきあげた金だ、と月城ネスが言う。望海アルのやっていることは正しいのか正しくないのか。どんなお金でもお金はお金―!と云うラブロー神父の声が聞こえてくるが、他人からまきあげた血のにおいのする金を民衆は忌み嫌う。だが、食べなければ死ぬ。
正しいことは何か、正しいのは誰か。
「その警察だって俺たちから賄賂を貰ってのうのうとしていながら民衆達には何ひとつしてやろうとしないじゃないか、」
「そう云う偽善者ヅラしている奴等のほうがよっぽど非道いんじゃないのか、」
詭弁かもしれない。でも、アルの言葉が突き刺さる。

一方、望海アルの慈善はただの売名行為だと言う者もいる。確かに、第三者的な目でみたら、そう考えるのが妥当だろう。だけれど、望海アルの人生によりそい、彼をずっと観てきた観客としては、望海アルはそんな子じゃない!!!と声を大にして言いたかった。アル・カポネが為してきた様々なことはまごうことなき事実として歴史の中に存在している。けれど、アル・カポネの心のなかまで知ることは出来ない。本当の彼は何者であったのか、彼の心のなかに在る真実は、誰も知らない。だから、これも、アル・カポネの真実の姿のひとつ。原田くんの、「俺の考えるアル・カポネ」は、何と云うか、つまり、とんでもない萌キャラでした。

月城ネスと望海アルの再会。
あの男がアル・カポネだったのか・・・
まるで、ずっと探していた白馬の王子様が実は親の仇だったみたいな月城ネス。
ここは少女漫画的な展開だと反発しながらもやはりどうしようもなく惹かれてしまい、そんな自分に苦悩するターンが単行本五巻くらいはつづくのだけれど、月城ネスは読切りペースの速さであっさり、望海アルにころっといっちゃう欲望に正直な月城ネス。

君の言う通りだ、と、自分を肯定してもらえたことが嬉しかったのか月城ネスを自宅に招待する望海アル。
レキシントン・ホテルへ?
よく知ってるな?!
・・・有名だよ、
おまわりさーんストーカーでーす。
それにしても望海アルさん、知らない男をほいほい自宅に連れて行っちゃダメですよ。あぶないったらもう!

て云うか、出会って即、自宅に招待とかそんなのOKだと思うじゃないですか、なのに自宅へ行ったら、奥さんがいたんですよ、どう思いますかこれ?!?!て酒場でクダをまく月城ネス後日談。

何か食事を、と云う望海アルに、スパゲッティしかないけど、と言う大湖メアリーのこのセリフ好き。イタリアーノの夫の為に、スパゲティはいつでも用意してある大湖メアリー。良い奥さん。

自分がかつて助けてもらったことを告げる月城ネス。それをちゃんと憶えていた望海アル。双方、自分の事を憶えていてくれたなんて、ちょっと嬉しいよね。酒をすすめるも断る月城ネス。真面目だな、と、相手に対する好感度を隠さず微笑む望海アル。けっきょく呑むのだけれど、美味いな、と、しみじみとつぶやく月城ネス。法は守らなければならない、けれど酒の美味は認めざるを得ない、月城ネスの素直さが清々しかった。
職業を保険会社の社員(ココうろ覚え。職業何だっけ?)と偽った月城ネス。
「俺は、ほんとうは君みたいになりたかったんだ、」
そっとこぼした、望海アルのほんとうの心。とうの昔に諦め捨てた、叶わない夢。ウォール街でスーツを着て、真面目に働き出世をして、妻と子供の待つ家に帰る。陽のあたる世界での生活。それは望海アルには絶対に手に入れられない、憧れだった。もうとうに捨てた夢だった。それを月城ネスと出会ったことでフと、思いだし、戯言のように語る望海アルに、切なくなった。
月城ネスは莫大な富と権力を手に入れた暗黒街のボスがこんな平凡な男になりたいだなんて、と、驚き、また、アル・カポネの知らない顔を見てしまった事に戸惑う。どんどん今まで知らなかったアル・カポネの顔を知って、自分を信頼してくれている望海アルの無防備な笑顔に、どうしたらいいのかわからなくて、いや、わかっている、月城ネスは自分の立場を忘れてはいない、けれど、だからこそわからなくて、いっそこの酒を呑んでしまったみたいに彼を受入れられたら、悩みまくる月城ネス。その瞳が、真剣で、ちょっと恐いようでさえあった。
真那ジャックが現れ、月城ネスはそっと逃げるように帰る。
え、スパゲッティ食べていかないの?とちょっと残念そうな望海アル。
真那ジャックに、アイツは捜査官だ、と言われても、いや、アイツは保険会社の・・・、望海アルさんほんとうに暗黒街のボスなのかな???そんなに信じやすくて無防備でどうするの。真那ジャックの苦労が垣間見えた一瞬だった。

職務をまっとうする決心をした月城ネス。だけれど、望海アルには捕まってほしくない。でも、君(望海アル)なら何とか逃げきるだろう。と望海アルに丸なげする月城ネス。え、このひと仕事を何だと思ってるの。自分で何とかしようよ。このマダオが・・・。(ここでエリオット・ネスがマダオだったことを思いだして、ハッ、と我に返る。)

夏美トーリオさんならぬ、夏美メロン(かわいい)財務長官。『相棒』を思いだし、ちょっと懐かしい気持ちに。

陪審員を買収して余裕で裁判にのぞむ望海アル。望海アルの命令に静かに従う弁護士の久城エドワード・オヘア。望海アルは例によって彼を全面的に信用している。最も、危険な男であることに気付かないまま。そうしてそんな望海アルの信頼を無表情のまま何の迷いもなく踏みにじることの出来る男、久城エドワード・オヘア。完璧なまでの無表情と云う演技。何の感情も無い、望海アルへの忠誠も裏切りも感じさせない。久城くんのこう云うところ、もう久城くんの大好きなところがぎゅ、とつまった芝居。こう云う役が観たかった。

ラストの裁判のシーン。『アンタッチャブル』では余裕綽々のふてぶてしいアル・カポネが有罪になった瞬間は、してやったり!と、勧善懲悪の爽快さを感じたのに、・・・その瞬間、胸が張り裂けそうだった。彼は罪を犯した、有罪は当然、でも、彼は悪くない、と云う、この矛盾に満ちた矛盾。ちょっとどこまで本気なのと思われそうだけれどほんとうに本気の本気でもう声をおしころして泣くしかなかった自分に自分でドン退きだよ。そうして激昂する望海アルの隣で、いままでずっと鉄仮面のような無表情だった久城エドワードが微笑したのをみてしまった、そのときの、この、血がふっとうするような、彼の色のない唇が真っ赤にみえたその瞬間の、この昂揚感、おわかり頂けるであろうか。
罪深きは我が性癖。
アル・カポネに雇われ、職務を全うすることよりも正義を選んだ弁護士を今まで勇気ある法の番人と思っていたのに、こうもまったく異なる見解になるとは。裏切り者なんて云うちんけなものではない、久城エドワードこそ最高の悪である、このラスボス感。激昂する望海アルからはまばたきさえも惜しいほどに目をはなすことなど出来はしませんが、下手からゾクリ、とするほどのナニかを感じたら、そこには久城エドワードが血に濡れた唇で微笑んでいます。最高の久城あすに、震えます。

皆が望海アルに矢印をむけていた、けれど唯一、望海アルに矢を放たなかった人物、それが久城エドワード・オヘア。彼はアルに何も求めなかった。彼にとってアルは路傍の石のような存在にすぎなかった。だが、むしろそれこそが彼の狂おしいまでの愛のカタチであったのかもしれないと云うのはまぁまた別の話になるのでここはひとまずおいておきます。

久城くんと望海さんて、たまたま同じ委員会になってしまった久城くんが、友達もいなくて教室の片隅でいつも本を読んでいた望海さんにまるで親しい友達のような笑顔で話しかけてきて、それからもいっしょに委員会の仕事をしたり下校したり何かと二人でいることが多くなって、最初は戸惑っていた望海さんも初めてできたその「友達」が嬉しくて、そうしてすっかりと二人は仲の良い「友達」になったと思っていたのだけれど、遠足のグループを組むときに望海さんが久城くんの姿をさがしたら、「あ、俺もう他のやつのグループに入っちった、ゴメンなー!」とまったく悪気などなく、他意などなく、いつもとかわらぬ久城くん。なんか、なんかそう云うカンジがするので、するので!!!
ままならない。
この話もとりあえずいまはおいておきます。

望海アルが捕まったことに動揺する月城ネス。君なら何とかすると思っていたのにどうして!いや、どうしても何も。そうして久城エドワード・オヘアを殴って、「彼は俺の親友だったんだー!」
知らんがな。
久城エドワード・オヘアさんぽかーん、だよ。いったい君はどっちの味方なんだよ。
て云うか何、一度会ったら友達で、二度目に会ったらもう親友なの?ねえ、そうなの?月城ネスの距離感おかしくないかな?!
きっと、はじめて出逢ったあの日から、もうずっと月城ネスは名前も知らない望海アルのことを想っていたのだろう。心の友、的な。僕のヒーロー、的な。「彼は俺の親友」この言葉だけを聴くと唐突でセリフだけがういているように聴こえるけれど、「彼の親友になりたかった」その気持ちを、吐露してしまった、そう考えるとこのセリフがとても切なくて、哀しく聴こえる。
そうして、誰かをかけがえのない存在と想うのに、時間は関係ない。
でもまあ久城エドワード・オヘアさん的には、知らんがな。だよね。殴られる理由ない!りふじん!

裁判で有罪になった望海アル。本来なら悪役的な立ち位置であるにも関わらず、主人公としてのゆるぎない存在感が少しも失われることがないのは、望海さんの主人公力と、そこまで納得できるまでに描ききった原田先生の力だと思う。そして、対するエリオット・ネスがアル・カポネ側であったことと、それによりエドワード・オヘアと云う“裏切り者”が生まれたこと、これが絶妙なバランスだった。
この物語のなかで、悪は常に「裏切り者」であった。

刑務所へ行く望海ネスに永久輝ベン・ヘクトの脚本を渡す、月城ネス。そこに描かれていたのは、アル・カポネを悪として糾弾する言葉ではなく、「ギャングスター」華やかに艶やかに、己の正義を貫いた、ひとりの男の真実だった。
満足そうに、微笑う望海アル。「ギャングスター」最高の賛辞だ。己の正義を信じて、仲間の為に、生きた、もう何の悔いもない、迷わない、よく生きた、生ききった─、それが望海アル・カポネの人生だった。

ラスト、今までずっとダークスーツだった望海アルは白いスーツ姿で現れた。お衣裳の色を言葉のように使う原田先生の演出、『ノクターン』でも『白夜の誓い』でも、とても印象的だった。
舞台奥からのライトが、後光のようにさして、まるで望海アルの背中に羽が生えているようで、まさに大天使、アルフォンス・ガブリエル・カポネ─、これから幾たびの苦難の末に、天へとむかう、アル・カポネの姿を描いていたようでした。

アル・カポネに視る悪と善なるもの。それは彼が悪の顔と善の顔を持っていると云うよりも、右目でみたときと左目でみたときでは景色が違って見えるように、彼自身は悪でも善でもない、また悪でも善でもある、すべての人間がそうであるように、彼もまた、そう云うただの人間だった。望海アル・カポネは伝説のギャングスターである前に、太陽のような情熱を抱いた心優しきイタリアーノだった。

月城エリオット・ネスは、印象的な部分をすべてもっていった感があるほどに、存在感のある役だった。その強い存在に、出番の少なさはあまり感じられなかった。すごくよい月城かなとだった。この公演で私のなかで株が急上昇です。危険な感じが増したとも言えますが。最近、望海さんを視る月城くんの目が、こわい。(もんぺ発言)

あの印象的なアル・カポネ像をどうするのだろう、あのまま表現したら宝塚的ではない、でもあのインパクトを無視も出来ないだろう、そうして、現れた望海風斗アル・カポネはまごうことなき、アル・カポネだった。何と云うミラクルか。キモは眉毛のお化粧。少し太めに濃く、あのラインがアル・カポネの眉のラインそのままなのです。アル・カポネの写真と見比べてみて下さい。そうして美しく宝塚的に見えるギリギリのラインを保って仕上げてある。『戦国BASARA』の佐助の時のように、鏡とにらめっこしながら研究したんだろうなあ。真面目。誠実。真摯。好き。デレた。

フィナーレはほっとしたと云うか、なんだかむしょうに哀しいけれど、幸せな、フィナーレでした。

出演者、みんな最高でした。

もっといろいろな人のことなどもこまかくねっとりと書き連ねたいところですが、続きはまた。そろそろ息がきれてきました。
東京公演を経て、また何かが生まれることでしょう。楽しみです。